並走する電車
東京にひ弱な雪が降る。
これは積もらない方の雪だからすくうことができない。
電車の並走のとき、窓に映る人たちが運ばれているのがわかる。それぞれがそれぞれの帰る場所があり、それぞれの人生の時間を歩んでいると想像したとき、私にはすくいきれないほどの膨大な情報が押し寄せてくる。
並走する電車に乗る人の中に、私のような並走する電車を眺めている人はあまり見かけない。携帯をいじっている人や本を読む人、眠る人。それぞれが時間の使い方をわかっているように感じる。
並走する電車に乗るサラリーマンは今、背中の汗が気になっているかもしれない。あるいは、女子高生は履いているソックスがずれ落ちていて、それを気にせず携帯をいじっているかもしれない。見えないところの情報を想像でしか補えない。月が追いかけてくる。
明日もこの時間になれば並走する電車に乗り込んだ人々の横顔が見える。